ク•ビレ邸の秘かな愉しみ

北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(大阪市)の情報発信拠点「ク・ビレ邸」で開催されるイベントに関する極秘ニュース。決して他言は許されませんのでご注意あそばせ!

詩と声で虚実を交錯する路上の吟遊詩人

◉邸主の妄言 PREVIEW

良元優作は吟遊詩人である。
彼のスタイルはギターの弾き語りで、それは60年代のフォーク・シンガーたちから脈々と受け継がれてきたものである。ただ多くの先人と一線を画するのは歌詞と声や歌い方の妙なる一致であり、これこそ天賦の才と呼べるかもしれない。

まず始めに歌詞だが、良元優作のそれには虚構の中の現実、あるいは現実の中の虚構が「入れ子細工」のように構成されている。しかも主人公(登場人物)は社会的弱者や不器用に生きる人々である。

   空いた電車の吊り革で 器械体操やってるヤツがいるよ
   たぶんあのオヤジ 北京オリンピックの 興奮がまだ覚めないんだ
   表彰台に上るオヤジが見える              「へたくそな唄」

実際に電車の吊り革で体操をやってる人がいたとは思えないが、彼の想像力の中では確かにウダツの上がらないサラリーマンが表彰台の一番上を目指してオリンピックごっこに興じていたんだろう。

   こおろぎが鳴く頃には 僕にも娘ができるんだよ
   しっかりしなきゃと思って 仕事探しにいったけど
   面接官の質問にオドオドしながら
   缶コーヒー買うのをガマンした帰り道           「帰り道」

もうすぐ生まれてくる子供が「娘」だと判っている時期に、仕事を探しにいくのでは生活設計が遅すぎるし、仕事のアテもなく途方に暮れたからといって、100円ちょっとを節約しても何の解決にもならない。しかし良元優作はどうにもならない状況からの脱出を描いている。つまり彼の歌詞に登場する人物あるいは本人は、いつも「前向きにアキラメ」て「ここからほかの場所」を目指しているのである。だからこそ多くの人がそこにリアリティーを実感できる。フィクションだけで歌詞を書くのでなく、実体験だけを歌っているのでもない。フィクショナルな歌詞にリアリティーを感じることができ、リアルな状況描写がフィクションのように見える。これこそ容易くマネできない良元優作の作詞スタイルではないだろうか。

次に、このような独自の歌詞を聴衆に届けるためには、独特の歌声が必要になってくる。高田渡、遠藤賢司、有山淳司、吉田拓郎などフォーク・シンガーの歌声と歌唱法はそれぞれが長い年月をかけて獲得した、文字通り「名声」である。良元優作の歌声も先人同様、一度聴いたら、決して耳から離れようとしない。少し鼻にかかった、中音域が強調された声。頭のテッペンから発声する西洋のベルカント唱法ではなく、喉をしめつけながらも時々、裏返る浪花節の歌い方。ストレートに現実味を帯びて歌っているようでいて、微妙に声色を変えてフィクションを醸し出している。つまりこの声と歌い方にも虚構と現実が交錯しているのである。

このように歌詞にも声や歌い方にも、虚構と現実を「入れ子細工」のように組み合わせて表現するのだから、歌詞も声も耳から離れなくなり、もう一度、聴きたくなる。麻薬のようにフィクショナルで甘美な響きでもあり、耳元に語りかけてくるようなリアルな距離感でもある。遠い昔、印刷技術がまだ発明されていなかった頃、詩人たちは自作を路上で吟じていたそうだが、良元優作こそ本来の意味で、現代の「路上の吟遊詩人」なのかも知れない。

(文責・佐藤香聲

◉良元優作 ギター弾き語りライブ w/中島直樹(bass)

【日   時】2012年9月28日(金) 開場:19:00 開演:20:00 / 21:30

【料   金】前売:1,500円 当日:2,000円
       ※前売、当日共、1ドリンク・オーダー制

【問い合わせ】06-7492-750417:00 – 22:00

【参照サイト】良元優作 Blog

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投稿日: 2012/09/29 投稿者: カテゴリー: 音 楽 タグ: , ,

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