ク•ビレ邸の秘かな愉しみ

北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(大阪市)の情報発信拠点「ク・ビレ邸」で開催されるイベントに関する極秘ニュース。決して他言は許されませんのでご注意あそばせ!

潤声と手風琴で奏でる頽廃の美学

◉邸主の妄言 PREVIEW◉

ゴトウイズミという奇妙で愛らしい歌声を初めて知ったのは、知人のsalon bar「夕顔楼」だった。高校受験の頃に深夜ラジオで聴いたフォーク歌手・森田童子を思わせるようなウィスパー・ボイスで、歌詞からは「妄想倶楽部」とか「サーカス」とか「喫茶店」など、昭和時代のイカガワシイ場所を連想させる単語が聴き取れた。マスターに訊ねると広島在住のアーティストだとか。それから1ヵ月後くらいのこと。ク・ビレ邸を運営するアート・プロジェクト集団「鞦韆舘」のシェアハウスに住む女性アーティストが、広島に遠征してライブをやると聞いた。彼女はラスと呼ばれているイラストレーター兼ミュージシャンで、自身のアカペラ・グループ「ばきりノす」を率いている。身長は短いけど気は長い、お茶目な女性だ。そのラスが広島でライブをする会場こそ、ゴトウイズミ女史が運営する「ヲルガン座」だったのである。偶然とはいつも奇妙なものである。早速、ラスに頼んでゴトウイズミ女史のサイン入りCDを広島土産としてねだった。

ゴトウイズミ、彼女が歌うメロディーはデカダン的なイメージを孕んでいた。彼女自身によるアコーディオン弾き語りに加え、コントラバスやクラリネット、アルト・サックスなど、湿気を帯びた古ぼけた楽器が憂鬱に演奏しているかのようだ。もちろん、その歌詞もデカダン的な雰囲気で溢れている。

   季節が変わってもホラ、僕は生きているみたいだ
   君がいなくなっても この国は普通に動いている      「ハッピー」

   古びたアパートメントで今日も 鳴らない電話の前にいた
   人生もう一度やり直せるとしても 同じ人生を繰り返すだけ 「快楽パレード」

   ああ電球の下では
   本日最後は僕によります 一人影踏みダンス!       「サーカス」

これらの歌詞に通底するイメージは「前向きのアキラメ」ではないだろうか。何をやっても上手くいくはずもなく、かと言ってこれ以上、ダメになることもない虚無感。あるいは中途半端なくらいの高さでグルグル巡っているような浮遊感でもある。思えばこの国は冒険を止めてしまったのか、音楽業界ではカバー曲がヒットを飛ばし、テレビは再放送が人気を拍し、アニメをドラマ化した映画が話題をさらう。「今までにないような」という妄想だけが膨らみ続け、破裂寸前でまた萎んでしまう。こんなどうしようもなく閉塞した世界をゴトウイズミは歌っているかのようである、しかも熱く語るのではなく、半泣きではっきりしない声、そう「潤声(うるみごえ)」で歌うのである。

潤んでいるのは声だけではない、潤んだ視線はいつも怪しげな昭和チックな風景に注がれている。そこにはデカダンなイメージが蓄積されているのだが、決してノスタルジックではなくエキセントリックな感覚だろう。なぜなら彼女が物心ついた頃の昭和は、すでに高度経済においてピリオドを打っていただろうし、経済大国の名を欲しいままにしていた頃だろう。だから彼女の眼に映る「サーカス」や「パレード」や「喫茶店」に郷愁はなく、奇妙さあるいは新奇さがつきまとっている。そう言えば、ク・ビレ邸のある「北加賀屋」(大阪市住之江区)も昭和30〜40年代以降、時間が止まったままの町だ。ゴトウイズミ女史が好みそうな昭和チックな喫茶店がポツポツある。この機会にぜひ北加賀屋でお気に入りの「どこにもない」喫茶店を見つけてもらえたら、と思う。

(文責・佐藤香聲

◉ゴトウイズミ X’mas プチ・ディナー show

【日   時】2012年12月25日(火)開場:19:00 開演:20:00 / 21:30
       ※入れ替えなし

【料   金】前売:2,000円 当日:2,500円
       ※前売、当日共、1ドリンクつき
       ※クリスマス的フード・メニューあり(料金別途)
       ※ゴトウイズミからのX’masプレゼント抽選会あり

【問い合わせ】06-7492-7504(17:00 – 22:00)

【参照サイト】ゴトウイズミ公式サイト

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