ク•ビレ邸の秘かな愉しみ

北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(大阪市)の情報発信拠点「ク・ビレ邸」で開催されるイベントに関する極秘ニュース。決して他言は許されませんのでご注意あそばせ!

大正浪漫と昭和懐古を着物に纏う一人芝居

◉邸主の妄言 PREVIEW◉

「お勢登場」(江戸川乱歩/作) 会場:藝術中心◉カナリヤ条約

「お勢登場」(江戸川乱歩/作)
会場:藝術中心◉カナリヤ条約

ク・ビレ邸ではダンスや演劇のソロ・ワーク、音楽やトークといったライブなど、さまざまなパフォーミング・アーツ(実演芸術)を開催しているが、中でも女優・久保田寛子による「月イチ一人芝居」は出色の企画である。これは自身でセレクトした日本文学を自らが一人芝居に翻案する演劇作品である。これまで取り上げられた原作は江戸川乱歩、寺山修司、太宰治、泉鏡花など、ヒトクセもフタクセもある作家で、しかもそれらの作品には「幻想・耽美・異端」といったキーワードが通底している。これらイカガワシイ作品を上演する際、久保田寛子は着物姿になる。もちろん大正ロマンや昭和レトロといった作品群を演じるから必然的かも知れないが、もっとも重要なことは、彼女自身の演技が着物姿を必要としているからである。

久保田寛子が所属する劇団「IQ5000」の俳優たちはステージを所狭しと走り回る。主宰の腹筋善之介が提唱するパワーマイムやスイッチプレイ(これらの演技あるいは演出の技法については近いうちにこのサイトで検証したい)では、舞台俳優にスポーツ選手並みの身体能力を要求する。もちろん彼女もほかの出演者と一緒に、息せき切って舞台を縦横無尽に駆け巡っているのである。スピーディーな展開の中で持続するテンションは、同劇団の最大の武器といっても過言ではない。

「お勢登場」(江戸川乱歩/作)
会場:藝術中心◉カナリヤ条約

一方、ク・ビレ邸で上演してくれる「月イチ一人芝居」ではIQ5000とは対をなすかの如く、端正で凛々しい立ち姿で演じる。もちろん走らないし、息も切れない。「見返り美人」のように微笑みを捏造する。彼女自身、長年にわたって習得している日本舞踊の所作を取り入れ「艶」を表現する。気品あふれる演技の中だからこそ「幻想・耽美・異端」といったイメージが屹立してくるのだろう。

そんな彼女の一人芝居に美妙な変化を感じ取れたのが、前作「童話」(作/夢野久作)だった。それ以前は、原作に登場する女主人公を基本的に演じてきたのだが、同作では子供を演じたのだ。もちろん夢野久作が描く子供であるから、ワンパクやらイタズラというステロタイプでないことは確かだったが、以前のような艶やかな大人の女性でないことも確かだった。しかも今作「花物語」の登場人物も子供=少女である。久保田寛子は自身の一人芝居において、艶やかな女性から純粋無垢な子供あるいは夢見る少女へとパラダイムシフトしようとしているのだろうか。それを確かめる日は指折り数える正月より少し早く来るけれど、大正時代のモダニズムと昭和のレトロスペクティブが同居する彼女の一人芝居は正月よりも縁起がいいかも。

(文責・佐藤香聲

◉久保田寛子 月イチ一人芝居 vol.7 「花物語」(作/吉屋信子)

【日   時】2012年12月28日(金)開場:19:00あたり 開演:20:00くらい

【料   金】1,500円(1ドリンクつき)

【問い合わせ】06-7492-7504(17:00 – 22:00)

【参照サイト】久保田寛子、雅の道へ

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