ク•ビレ邸の秘かな愉しみ

北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(大阪市)の情報発信拠点「ク・ビレ邸」で開催されるイベントに関する極秘ニュース。決して他言は許されませんのでご注意あそばせ!

江戸川乱歩に再挑戦!日本文学の一人芝居化

◉邸主の妄言 PREVIEW◉

関西出身の異能俳優・腹筋善之介が率いる劇団「IQ5000」(東京)の主演女優・久保田寛子。彼女が月一介、ク・ビレ邸で一人芝居を上演してくれてもうすぐ一年を迎える。演目は日本文学からのセクションで、どの作品も「耽美・幻想・異端」といったイメージを孕んでいる。小説から演劇へのアダプテーションは彼女自身で、これまで取り上げられた作家は、泉鏡花・夢野久作・太宰治・寺山修司など、いずれもヒトクセもフタクセもある作家たちばかりだ。

先月の上演作品「道成寺」 (2013年1月)

先月の上演作品「道成寺」
(2013年1月)

今回、上演するのは江戸川乱歩の「人でなしの恋」。ストーリーについてはネットで検索すれば即座にヒットするだろうから割愛するが、ここでは江戸川乱歩的ヒロインについて考察してみたい。この昭和レトロの人気作家が描く女主人公には「奇妙」とか「不敵」といったイメージがある。決して「清楚で可憐」といった類いではない。そのヒロインが「謎めいた事件」を引き起こす。ここまでなら「火サス」と大差ないけれど、乱歩は犯罪に関わる女性たちに「高貴」または「孤高」といったイメージを付加する。つまり「火サス」のヒロインたちが個人的な過去の清算や自身の情欲において犯罪に手を染めるのに対して、乱歩のヒロインは独自の美学を構築し、それを実現するために罪を犯す。だからその犯罪は自身にとって必ずしも有益とは言えず、どちらかと言えば、世の中の価値基準や体系、そして社会の仕組みや秩序に疑問符を投げかけるのである。最高傑作のひとつにして、今もなお女優・美輪明宏のレパートリーである「黒蜥蜴」(江戸川乱歩の原作による三島由紀夫の戯曲)がその典型である。

さて久保田寛子だが、以前、乱歩の「お勢登場」を上演してくれた。「お勢」というヒロインが夫を押し入れの長持に閉じ込め殺すのだが、結局、無実となる。久保田寛子はヒロインの心情を日本舞踊や和的な所作を取り入れ「高貴」に演じることに成功した。圧巻だったのがラストシーンの演技。ヒロインは件の長持を売りに出すのだが、乱歩は「今度は誰が誰をこの中に閉じ込めるのでだろうか」と読者に警鐘を鳴らす。久保田寛子はセリフを語らず、片方の口を歪めた「不敵」な笑いだけで演じ切ったのだった。

今回の作品「人でなしの恋」は文字通り、人ではないものへの恋情をテーマにしている。今回、久保田寛子は、ヒロインはどう「高貴」に、しかもどう「不敵」に演じてくれるだろう。ところで、同作品が映画化された際には、ヒロインを羽田美智子が演じている。羽田美智子と言えば、江戸川乱歩生誕100周年を記念した映画「RAMPO」の主演女優として名を馳せた。もちろん素晴らしい女優だが、久保田寛子も乱歩的な女優には違いない、と思う。

(文責・佐藤香聲

◉久保田寛子 月イチ一人芝居 vol.9 「人でなしの恋」(作/江戸川乱歩)

【日   時】2013年2月17日(日)開場:19:00あたり 開演:20:00くらい

【料   金】1,500円(1ドリンクつき)

【問い合わせ】06-7492-7504(17:00 – 22:00)

【参照サイト】久保田寛子、雅の道へ

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